漆塗りの個性、「塗趣」の世界

自然の理(ことわり)と呼応する漆の表情


漆器の新しい魅力:「塗趣」(としゅ)という概念

漆塗り製品の表面に観察される、色彩の濃淡や光沢の微細な差異は、これまで「塗ムラ」と表現されることもございました。しかしながら、弊所ではこれらの個性を、漆が本来有する自然な表情、並びに職人の手仕事による必然的な帰結として尊重すべきと考えます。

私自身、樹木医として樹木の保護に人工樹皮を塗布する機会がございます。その経験から申し上げますと、均一で無機質な仕上がりは、自然の温かみを損なうばかりか、かえって人工的な印象を与えます。一方、意図的に自然なムラを作り塗布した仕上がりは、樹木の本来の幹肌の質感に近づき、より自然な枝ぶりへと繋がるように感じられます。

また、社会の発展と技術革新により、伝統的な漆塗りをはじめ、ピアノ塗装や高級車の塗装など、一般消費者にはその差異が認識しづらいほど、塗りの 技術的な進歩は目覚ましいものがあります。そのような状況において、「塗趣」が持つ独特な質感は、他の塗り方とは明確な違いを示し、 商業的な魅力を高める可能性を秘めているのではないでしょうか。そして、この特徴が、地域経済の活性化にわずかながら貢献する可能性も視野に入れています。

素材となる木地の特性、漆の呼吸、そして塗り重ねる職人の熟練した技術が相互に作用し、生み出される一点一点異なる風合い。この奥深く、趣のある表情は、まさに漆塗りの原点であり、その本質を構成する重要な要素であると認識しております。弊所では、この自然の理と呼応する趣深い表情を「塗趣(としゅ)」と称し、皆様にご理解いただきたく存じます。


「塗趣」という言葉に込めた意図

「塗趣」という言葉には、以下の意図を包含しております。

  • 私たちが大切にする「塗趣」:漆器の新たな魅力
  • 漆塗り固有の多様な表情への敬意:均一性のみを追求するのではなく、多様な表情の中に宿る美意識を涵養すること。
  • 職人の手仕事の価値の再認識:個体差として現れる仕上がりは、職人の技術と感性の証左であること。
  • お客様との新たな対話の創出::漆塗りの魅力を多角的に捉え、より深い理解を促すための共通言語とすること。


「蔵出殿 かく丸漆器問屋」における「塗趣」の扱い

今後、弊所ウェブサイト「蔵出殿 かく丸漆器問屋」においては、漆塗り製品の特有の表情を表現する語彙として、「塗趣」を積極的に用いてまいります。製品紹介においては、それぞれの「塗趣」が有する魅力を的確にお伝えするよう努めて参ります。

 

広く認知されることを期待して

この「塗趣」という言葉が、漆塗りの新たな価値観として広く社会に浸透し、ご理解を賜りますよう心より願っております。また、この試みが、長年にわたり漆塗りの技術と伝統を継承してこられた職人の方々、並びに先達の皆様への敬意を損なうものではないことを願うものであります。

今後とも、「蔵出殿 かく丸漆器問屋」を通じて、漆塗りの奥深い魅力をお伝えすることに尽力してまいりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

今後の展望

「塗趣」は、日本の伝統的な漆塗りの美しさを、新たな素材と独自の技法を通して表現することを目指しています。現在、土や自然由来の鉱物を組み合わせた、焼成しない陶器のような質感を持つ新しい商品の開発を構想しております。

この新しい試みでは、自然素材ならではの温かみを生かしつつ、漆塗りの豊かな表情と耐久性を両立させることを目指しています。素材そのものの持つ風合いを活かし、一つひとつ手仕事で丁寧に作り上げることで、皆様の暮らしにそっと寄り添うような、新しい価値を持つ商品をお届けできるよう、研究開発を進めて参りたいと考えております。

今後の「塗趣」の新たな挑戦にご期待いただければ幸いです。

 

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